大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)55号 判決

原告の主張する審決取消事由の存否について検討する。

本願発明の要旨と第一引用例及び第二引用例の各記載内容とが審決認定のとおりであること、本願発明と第一引用例のものとを対比すると審決認定の相違点及び一致点があることは、いずれも原告の自認するところである。

1 原告は、第二引用例のものにおける溝が、一対のバーに設けられたものであつて、ガラス部品のへり面に直接設けられたものでない点を、それがガラス部品のへり面に直接設けられている本願発明の効果と共に強調する。

しかしながら、成立に争いのない甲第三号証(ことに、第一欄第三〇行~第四三行)によれば、第一引用例のものは、フレームにより支持されたグリツドと、蛍光物質が塗布された板ガラススクリンとから成る「カラーパツク」を管に封入する代りに、管壁そのものに、スクリン部と円錐部との接合部において、グリツドワイヤを支持させると共に、管のフエースプレートそのものの内面を蛍光面として使用したものであることが明らかである。右の事実と成立に争いのない甲第四号証とによれば、第二引用例のものにおいて、グリツド組立体14が第一引用例にいう「カラーパツク」に照応し、その「一対のバー」24、26が、保持組立体28と共に、右「カラーパツク」でいえば「フレーム」に該当することは容易に理解されるところである。そのうえ、右甲第四号証第二頁右欄下から第八行~第五行の記載によれば、第二引用例には、そのようなグリツド組立体14を用いる代りに、管のフエースプレート16にターゲツト電極(したがつて蛍光面)を設けるように変更してもよいことが示されていることが認められる。

第一引用例のものと第二引用例のものとの間には右のような密接な関連性があるのであるから、第二引用例のものにおけるバー24、26に設けられた、グリツドワイヤの整列と移動防止のための「溝」を、基本的に同じ目的のために、第一引用例のものにおいて「カラーパツク」の「フレーム」に代えてグリツドを支持する、管壁を構成するガラス部品のへり面に設けることは、直接の示唆がなくても、当業者のたやすく想到することができることというべきである。

また、原告の主張する本願発明の効果(従来技術の欠点の除去)は、結局、第二引用例のものも有する、溝のワイヤに対する整列、移動防止の効果に帰着するものであるから、格別のものということはできない。

2 なお、原告は、第二引用例のものにおけるバーは、従来技術における、可動性の金属枠にワイヤを張設してワイヤを枠と共にガラス部品のへりの間に溶着したものに相当すると主張する。

しかしながら、成立に争いのない甲第二号証によれば、本願発明の明細書に示されている従来技術(第五頁)においては、可動性金属枠は、管の外部にあり、ワイヤの溶着の後、ワイヤの切断によつて外されるものであつて、それ自体が溶着されているものではないことが認められる。

他方、前掲甲第四号証第一頁右欄第一〇行~第二頁左欄第一三行、第二頁右欄下から第一一行~第三頁左欄第四行及び第1図の記載によれば、第二引用例のもののバー24、26は、管体に取付けられる別個のユニツトであるグリツド組立体14の一部として、完成された管の内部に存在し、しかも、バー自体が管壁を構成するガラス部品に溶着されるものではないことが認められ、また、隣り合うワイヤに異なる電位を与える必要上絶縁体でなければならないから、金属ということはありえないと解される。

そうすれば、従来技術を、本願発明の明細書に記載されているものと解しても、あるいはまた、仮に原告主張のようなものであると解しても、第二引用例のもののバーが従来技術における金属枠に相当するものとは到底いえないから、原告の右主張は、採用することができない。

以上のとおりであり、審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないから、これを失当として棄却することとする。

〔編註〕 本願発明の要旨および審決理由の要点は左のとおりである。

本願発明の要旨

管球を構成する二つのガラス部品の少なくとも一つのへり面の厚みの少なくとも一部に、格子のワイヤを受入れる平行・等間隔の溝縞を備えていることを特徴とするスクリン・円錐部、この両者に挟まれた制御格子を溶着結合したカラーテレビ受像管。

審決の理由の要点

本願発明の要旨は前項記載のとおりである。

本願発明の特許出願前日本国内において頒布された刊行物・米国特許第二八一三二一三号明細書(クラス三一三)(昭和三三年二月二二日特許庁資料館受入)(以下「第一引用例」という。甲第三号証)には、カラー陰極線管の構造とその製造方法についての記載があり、特にその第1図ないし第3図及びこれに対する説明事項によれば、管球を構成する二つのガラス部品から成るところの管体部11と前面板16とが互いのへり面で溶着結合されると共に、この際これらの両者に挟まれてグリツドワイヤ15が一体に密閉結合されて成る構成を有するカラー陰極線管についての開示がされている。

また、同様の刊行物・特公昭三四―三一一二号特許公報(以下「第二引用例」という。甲第四号証)には、陰極線管グリツド構造に対する振動抑制装置についての記載があり、特にこの記載内容中には、グリツド組立体のワイヤ22を、それらがターゲツト電極の蛍光体塗布面20へ隣接するように位置を定めるためには任意の適当な方法を使用してよいが、このためには、一対のバー24及び26が使用され、その各々はその上面にワイヤ22を整列させるための一連の等間隔に距てられた溝を有し、これによりワイヤ22の内部移動を阻止するという趣旨の記述がある。

そこで、本願発明と第一引用例のものを対比すると、管球を構成する二つのガラス部品である本願発明のスクリン及び円錐部は、第一引用例のものにおける前面板及び管体部にそれぞれ相当すると認められるので、カラーテレビ受像管における管球を構成する二つのガラス部品であるスクリン及び円錐部とが互いのへり面で溶着結合されること、また、前記スクリン及び円錐部との両者に挟まれてグリツドワイヤ、すなわち、制御格子が一体に溶着結合されて成ること、の各構成を有する点について、本願発明と第一引用例のものとは軌を一にするものと認められる。ただ、前記制御格子を等間隔に整列させるために、本願発明は、前記スクリン及び円錐部の少なくとも一つのへり面に、格子のワイヤを受入れる平行・等間隔の溝縞を備えた構成を有するのに対し、第一引用例のものは、特にこのような構成を具備していない点で、若干の構成上の相違がある。

よつて、右の相違点について考察するに、前述のように、陰極線管における格子のワイヤを等間隔に整列保持するために、前記ワイヤの固定保持されるべき一対のバーに対し、一連の等間隔に距てられた溝を形成するようなことは、第二引用例に記載されたものにおいて公知の技術事項であるから、本願発明において、制御格子の等間隔整列を行なうに当り、前記スクリン及び円錐部の少なくとも一つのへり面に格子のワイヤを受入れる平行・等間隔の溝縞を備えさせることは、上記公知の技術事項を適用することによつて、当業者が何らの発明力を要することなく、任意に想到実施しうる程度のことと認められる。

したがつて、本願発明は、第一及び第二の各引用例の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第二九条第二項の規定によつて、特許を受けることができないものである。

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